■プロローグ

 時代は今、大きく動こうとしている。ぼくらは、とても大きな変化のただなかにいる。
 近代的な合理主義から、新しい神秘へ。神を殺した上に成立していた20世紀から、自然の神秘を受け容れる21世紀へ。
 今、新しいミレニアムにふさわしい、新しい価値が求められている。
 文法、哲学、物理学、経済理論、コンピュータから洋服のボタンひとつにいたるまで、新しい価値の座標軸が構築されつつあるのだ。ここで、そこで、いたるところで。
 20世紀を代表する創造物のひとつである自動車もまた、その例外ではない。自動車シーンを取り巻く環境は大きく変化し、そのテクノロジーやコンセプトは大きく前進しようとしている。
 そんな今、ぼくらが心から欲することのできるクルマとは、どんなクルマなのだろうか。あるいは、ぼくらはもう一度、かつてのようにクルマを愛することができるのだろうか。内燃機関を抱えたこの独特な機械に愛を捧げることができるとして、それはどのようなクルマなのだろうか?
 ここに、20世紀から21世紀への、記念すべき年の最後を飾るのにふさわしい、提案のひとつがある。心からクルマを愛する人々が集まって創りあげた本当のスポーツカー、そのプロトタイプカーができあがったのである。
 新世紀のエポックカーを目指しながら、同時にクルマの原点を思いおこさせる、本当のスポーツカー。すなわち、十分に2000年代の機能を保有しながら、"スポーツカー"の名称で呼ばれる物語を羽織っているクルマ。
 それが "VEMAC RD180"なのだ。


■ 山川 健一(作家)略歴
1953年生まれ。
1977年、「鏡の中のガラスの船」で『群像』新人賞優秀作受賞。著書は100冊を超える。
クルマ関係の著書に『僕らがポルシェを愛する理由』、『快楽のアルファロメオ』、
『Cars』、『欲望』などがある。
1999年11月から『iNovel 山川健一作品集』全7巻の刊行をスタート。
2000年12月20日、書き下ろし長篇小説『ニュースキャスター』発売

ウェブマガジン"I'M HERE"(http://www.imhere.com)編集長。
山川健一オフィシャルサイト"BE HAPPY!"(http://www.yamaken.com/)




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